“Runners”〜storiaX4〜

世の中には、例え同じ名前のヤツが1000人いたって出会わない事がある。でも、たった400台足らずしか 作られなかった車が偶然出会ってしまう事もある・・・

 俺とアイツのストーリアX4もそうだった。
最初はモータースポーツ用に16台。オーダーがあったから増やしていって、 3年後には400台。それでも400台。いや、本当に400台も作ったのかは定かでない。
とにかく、そんなストーリアX 4がなぜか集まるこの店で、俺とアイツは出会った。 なぜこの店にそんなクルマが集まるのかって?知ったこっちゃない。
別に呼んだわけでもなければその店が宣伝したわけでも ない。最初の来店理由のほとんどは「何となく偶然」。
まあいい。それよりも、こうした数の少ないクルマに乗っていると、自分以外のストーリアX4が走るのを見る機機会なぞほとんど無い。
だからかもしれない。俺とアイツはよくつるんで走った。
ある時は町で、ある時は店の近所を流し、パーツを組 めばテスト走行と称して・・・・・そう、峠へ。

 アイツと俺のX4には明らかな違いがある。アイツはほぼノーマルにハイグリップタイヤ。
俺はジムカーナという競技仕様で、タイヤは同じだが中古のツルツルもんだ。
ただし走りにそう大きく差は出ない。公道で走っている限り、ノーマルの柔らかいアシの方が安心して踏める場合もある。
エンジンには二人とも手を加えてないし、ウデはどうやらアイツの方が(悔しいことに)少しばかり上らしい。
だからこうしてちょっとしたバトルを繰り返しても明確な差が出ることはなかった・・・

 走り続ける。熱くなったエンジンを冷やすためにボンネットフードを開け、熱気を逃がす。
雨の日には盛大な湯気をあげ るほど、コイツのJC−DETエンジンはやたらと熱くなる・・・タバコに火をつけ、エンジンとともに自分もクールダウン していく・・・
今度のアシは・・・
新しいマフラーは・・・
補強したボディは・・・
熱く語る俺の話を、ノーマル派なアイツは軽く聞き流す。走れば自分の方が速い、そう語っているように・・・しかしアシ 周りなどにさんざんカネを投じておいて、大したタイムを稼げない俺はそれに反論できない。しかしそれは必ずしも不快じ ゃーないんだ。走れば二人ともそんな事考えるヒマは無くなる。
ストーリアX4の加速は凄まじい。どのくらいかって?そりゃ・・踏めばわかる。なにもかも、吹き飛ぶ。
それまでどんなにモヤモヤしてたって、ニヤニヤしてたって、タービンが動き始めた瞬間、全てはどうでもよくなり・・頬 が緩み、ニヤける。そして、目の前の自分の分身を追い、あるいは追われる・・・・

「走ろうか」

2台の全く仕様のことなるストーリアX4が夜の闇の迫る中、エンジン音を高める。高回転からのロケットスタート、 シートに押し付けられるほどの加速。
ふと、それまで考えていた事がどうでもよくなっていた。そう、心の中のなにもかもを吹き飛ばして、「疾るために」俺 達はアクセルをさらに深く踏み込んで闇の中に消えていった・・・・・・

(この短編?はフィクションです) Thanks by さわべ with M112SストーリアX4

一つ戻る

HP TOP